組織危機管理

危機管理とは不利益を可能性の段階から徹底的に排除・予防し、それでも発生するトラブルの被害を最小限に抑制するために整備するシステム全体を意味します。

問題となるのはシステム自体に目に見える生産性がないことで、費用対効果などを理由に多くのケースで議論の対象になります。
しかし従来の「臭いものには蓋をする」方式から対応を怠ると組織自体の信用を失墜させる最悪の結果につながることもあります。一度失った信頼を回復させるためには無限の時間と莫大なコストを必要とします。

逆にトラブルも対処の方法によっては利益につながることに着目するべきです。

--------------------
・効果的な組織危機管理の事例
アメリカの大手製薬会社ジョンソン&ジョンソン社の鎮痛剤タイレノールに毒物が混入され、死亡者が出る事件がありました。同社はマスコミが嗅ぎつける前に記者会見で事実を公表し、謝罪。外部の専門家の意見も取り入れ、生産から輸送、販売まであらゆる分野で次々と対応策を決定。マスコミをフル活用して世論に積極的な姿勢をアピールしました。
--------------------

結果として同社は急速に落ち込んだ市場シェアを8か月で回復させることに成功しました。
肝心なのは「積極的な対応」です。
マスコミが嗅ぎつけ「ばれる」のと指摘される前に自ら進んで「意見を仰ぐ」のとでは聞き手(世論など)の印象に雲泥の差があります。

トラブル解決のための主導権は当事者にあるべきで、マスコミやマスコミに扇動される世論に掻き乱されるべきではありません。
この関連して発生するトラブルを予防するには積極的に情報を開示する必要があります。様々な見地からの意見を取り入れながら対応策を決め、問題解決のために努力する「積極的な姿勢」を見せる事と「目に見える行動力」を示し、問題解決を成し遂げることこそ最善の危機管理システムでしょう。

このような「積極的な即応能力」の整備に平行してトラブルを可能性の段階から防止する「予防型の危機管理」を整備していくと効果的です。それには組織全体で危機管理システムを構築する必要があります。
概要としては、

  1. 委員会の設立
    危機管理委員会の設立が第一段階です。
    即応体制を充実させるために委員長は取締役など組織としての意思決定のできる役職者を選抜するのがベストです。
    この委員会で対組織内と対外、予防と即応などについて基本方針をまとめ、大概的なコンセンサスを決定します。
  2. 即応チームの編成
    第二段階として、委員会の示す指針を元に商品管理などの対組織内の即応チームと渉外なども受け持つ対外即応チームを編成します。
    各々の即応チームの下にはさらに細分化されたチームがあり、それぞれの専門分野を受け持ちます。
  3. 情報伝達の範囲の決定
    トップダウンでスピーディーに関係者全員の意思統一を図るだけでなく、伝達する範囲の決定も重要です。対組織内と対外など、無関係の情報を全員に伝達しても意味がありませんし、情報漏れの危険性も生まれます。
    「ニード・トゥー・ノー(知る必要のある者だけ知る)」を念頭に、どの情報をどのセクションまで知らせるのか決めることも大切です。
    またトラブルを予防するためには各現場から情報を吸い上げ、分析するシステムの編成も重要です。
  4. 運営と能力維持
    危機管理システムの運営で重要なのは関係者への意識付けの徹底と能力の維持向上を図ることです。特に即応チームのメンバーが専従でなく他業務との兼任である場合は、定期・不定期にシナリオに沿った予行演習を実施するのが効果的です。このシナリオプログラムは他のセクションや部外者との連携も視野に入れた内容で実施されるべきで、システム全体の能力向上を計ります。

などが挙げられます。

システム構築のためのアドバイスや能力の維持向上に関するシナリオの運営などについて、直接に参画させていただく準備をしており、安全確保のための皆様のご尽力の最先鋒として機能できる体制を整備しています。

まずは無料相談からお問い合わせください。

(2014年2月12日に一部内容を更新)

民事再生と安全管理

倒産・破産と勘違いされがちですが、民事再生申し立てとは民事再生法を根拠に、裁判所の管理下で支援を受けて会社を存続させようとする手続きです。裁判所に選任される監督委員(弁護士)が申し立て人(債務者)の残存資産の運用を管理し、社員の身分と給与の支払いを保護し、下請等の債権者には、債務者の資産額をベースに債権額に応じて金銭が分配されます。(=全額が支払われることはない)

これまでに関与した民事再生事案では、資金繰りの困窮を理由に、不渡りを出す直前に申し立てるケースがほとんどですが、申し立てに至る経緯を考察すると、新規開発の遅滞、サービスの低下、販売努力の不足などの自滅的な「自己責任」と銀行による不当な貸し渋り、組織的な乗っ取り工作、根拠のない風評被害などの「他者責任」があります。

潰れるほどではなく、回復の見込みがあるにもかかわらず、拡大解釈した銀行が潰してしまえと貸し渋る「複合責任」のケースも多く見られます。

一般的には、

  1. 申し立て
    通常は弁護士が申し立てます
  2. 保全処分
    売掛金等の支払いが停止され、資金不足による手形不渡りは回避されます。
  3. 監督命令
    裁判所が弁護士の中から選任の監督委員を選出します。
  4. 債権者説明会
    下請はもちろん、植木リースや雑誌購読、新聞など、微細な取引業者などを含む債権者に対しての説明会が開催されます。
  5. お客様説明会
    住宅販売などで代金(ローンを含む)を支払ったが物件の納入が済んでいなかったり、銀行や証券会社で資金を運用しているなど、取引が完了していない場合は、お客様も債権者となります。
    ※ 通常は取引業者とは別に説明会が開催されます。 ※
  6. 手続開始決定
    再生の手続きが開始されます。
  7. 再生計画原案等の提出
    概算の弁済率が決まり、メインバンク等の大口債権者から同意を取り付けるための交渉が始まります。
  8. 債権者による債権届出
    届け出ない債権は無効になります。
  9. 債権調査
    届け出られた債権が調査されます。
  10. 再生計画案の提出、債権者への送付
    裁判所に再生計画を提出し、裁判所が債権者にその内容を通知します。
  11. 債権者集会での決議
    参加者の過半数と出席しない債権者の過半数の賛成を受け、再生計画の履行が決議されます。
  12. 裁判所による認可
    債権者集会の決議を元に、裁判所が履行を認可します。
  13. 再生計画履行

という流れになります。
細かな手続きは省略していますが、準備が整っていれば申し立て日を基準に監督命令までは即日中、債権者説明会までが1~2週間、計画原案の提出までに1ヶ月程度、債権者集会から認可、履行までが4~6ヶ月程度とかなりの期間を要します。

もちろん、届け出る債権者の数が多ければ債権調査の期間が長くなりますし、支援の申し出がない場合や複数ある場合には、支援者の選定が遅れる可能性もあります。

これまでに関与したほとんどの民事再生事案で、再生企業としての長期的なリスクは申し立て以前に評価されており、このシミュレートを基準に手続きが進むため、企業危機管理上の観点から指摘する事はありませんが、注意するべき点としては、往々にして自虐的になりがちな態度を改め、「債権者の皆様と一緒に困難な状況を克服し、再生を成し遂げる。」という基本的なコンセンサスを幹部社員だけでなく一般社員にも周知徹底し、会社全体で共有することでしょう。

また警備会社としての観点からは、手続き中に高い確率で発生する債権者によるプレッシャーなどの短期的で突発的な脅威についても注意を払う必要があります。
申し立てがなされた時点で債務者は、監督委員の許可なく資産を運用できなくなりますが、下請などの債権者にしてみれば、親会社から債権を回収できないことは死活問題であり、「無いものは払えない」という理論は通用しません。多くのケースで申し立て前から取引残高の確認が始まり、申し立て直後から、民事再生中と再生後の展開も見据えた債権回収工作が繰り広げられます。債権額の大小にもよりますし、中には紳士的な債権者もいますが、ほとんどは恫喝と恐喝、集団による威力業務妨害まがいの不当要求、裏取引や裏工作の根回しなど、他の債権者より少しでも多く回収するための工作合戦は熾烈を極めます。

回収工作の程度と期間は、各々の債権者が持つ債権額の大小が基準になりますが、友好的であったはずの債権者が豹変する、敵対的な債権者が突然に友好的な姿勢を見せるなど、事前予測が通用しないケースが多く流動的です。

このため、申し立てから再生計画履行までの期間を状況に応じて分割し、安全管理を実施するとよいでしょう。
申し立て前後から債権者説明会(お客様説明会)までを「重点的に安全管理を実施する期間」、その後の債権者集会までは、規模を縮小し、不測の事態への即応能力を維持できる程度に「安全管理を強化しておく期間」と大別し、細かく変化する状況に個別に対応すると効果的です。

  • 重点期間
    債権者説明会までの期間は回収工作が集中しますので、直接応対する一般社員の安全管理が必須です。加えて、登記簿に居宅の住所地が記載されている幹部社員については、直接交渉を望む債権者による夜討ち朝駆けや、付け回しなどの行為に注意が必要で、ご本人だけでなく、ご家族の身の安全も確保する必要があります。
    債権者説明会とお客様説明会は、議題の進行とともに会場全体がヒートアップしていく傾向が強いことに注意が必要です。これまでに関与した中には、とある債権者が壇上の幹部社員に詰め寄り、他の債権者もそれにつられて詰め寄るといった展開もありました。対応次第では修羅場となりかねませんし、説明会以前からヒートアップしているであろう債権者の集団心理にも注意が必要です。
  • 強化期間
    多くのケースで債権者説明会以後の債権者は、債権者集会での賛成票をエサに、再生後の特権的な取引関係なども含む回収額についての裏工作を始めます。表面上の工作合戦は落ち着きますが、回収額に満足する債権者はほとんどいないため、再生計画が履行されるまでは、突発的な事態に注意が必要です。

当社では、身辺警護等の実働業務だけでなく、これまでの経験を軸とした安全管理計画の立案や実践ノウハウの提供、債権者の動向予測などで皆様をサポートする準備があります。まずは「無料相談」からご相談いただき、必要に応じてご利用ください。

(2014年2月7日に一部内容を更新)