警備業は認定事業です。
探偵社などが身辺警護をうたい文句に広告宣伝しているケースを良く見かけますが、警備業の営業認定を受けていなければ警護すること自体が違法行為です。準警察的な意味合いが強く、社会的責任の要求される業種であり、誰でも気軽に営める職業ではありません。
国内の警備会社は全て「警備業法」という法律の規定に基づいて、警察から営業認定を受け、厳しく管理されながら営業しています。
営業認定には「警備員指導教育責任者」資格が必要で、下記の警備区分ごとに警察主導で実施される講習で試験をパスした者に与えられます。受講には3年以上(実質は5年程度)の実務経験が必要です。
この資格を根拠に公安委員会に営業認定を申請しますが、犯罪歴はないか?暴力団など組織犯罪に関与していないか?などについて警察から厳しいチェックを受けます。この段階で前科を持つ者(5年以内)や組織犯罪者が排除されます。
認定を受け、営業を開始しても、警備員への半年毎の教育義務、適正な業務運営などについての事細かな規定を遵守する必要があります。半年毎に所轄警察署から立ち入りを受け、不備があれば認定を取り消されることもあります。
警備業法では、警備業務を
- 1号警備 (施設警備)
- 2号警備 (工事現場などの交通誘導・雑踏警備)
- 3号警備 (現金輸送)
- 4号警備 (身辺警護)
- 機械警備 (ホームセキュリティ)
に分類分けしています。
依頼を受け、上記の警備業務を提供すれば警備業を営んでいると判断されます。営利を目的に警備し、領収書を発行すれば警備業であると言えば分かり易いでしょう。
機械警備については、「警備員指導教育責任者」とは別の資格が必要となり、適した場所への待機所の設置や25分以内のレスポンスタイムなど、さらに厳しい制約を受けます。他にもスーパーなどでの万引きを防止する保安警備などがあります。
各々の業務ごとに個別の教育義務があります。
新人採用時には、法律などの基本教育を15時間、業務別の教育を15時間と最低30時間の新任教育を実施し、経験豊富な警備員にも半年毎に最低8時間の教育義務が課せられます。過去の職歴や保有資格に合わせて時間数が減免されることはありますが、警備員が何の教育も受けずに現場に出ることはありません。また、2号警備に従事する警備員を1号警備に配置換えする場合は、新任の業務別教育(15時間)を受けさせる必要があります。
半年毎に所轄警察から立ち入り検査を受けます。
「教育に不備はないか?」「適正に業務運営をしているのか」「護身用具の管理は?」など、事細かにチェックされ、書類の管理に少しでも不備があればペナルティで、教育時間を多く見せかけるなどするとアウトです。あまりに悪質だと認定を取り消されることもあります。
これまでに教育時間などで問題を指摘されたことはありませんが、2号警備を主体とする警備会社の中には、3月の繁忙期に教育を省く業者もいると聞きます。ただでさえ工事だらけで危ない3月に、何の教育も受けていない警備員の誘導で車を走らせているのかと思うとゾッとします。
このように警備業法は、警備業務を適正に運営するための公安委員会(警察)との約束事です。
多くの規定(制約)をコストと見るか、社会的責任を果たす上で当然の義務と受け取るかは意見の分かれるところですが、抜かりなく適正に運営し、不備さえなければ、身分が公的に証明されます。身辺警護のような社会的信用が重要な意味を持つ業務を営む者としては、ありがたい限りです。
(2014年2月12日に一部内容を更新)