不法投棄(現状と対策)

このエントリーをはてなブックマークに追加

廃棄物処理に関連する法律が施行され、どんなゴミを捨てるのにも費用がかかるようになりました。特に産業廃棄物については近隣住民の合意が必要となり、新規に処分場を建設するには「越えなくてはいけないハードル」が高くなっています。これらを理由に河川敷や山林などの人目につきにくい場所への不法投棄が増加しています。

不法投棄されるゴミとしては、鉄筋入りコンクリートなどの建設廃材(産廃)が代表的ですが、使用済み注射器などの医療廃棄ゴミ、冷蔵庫などの大型家電や雑誌や生活ゴミ、廃油などありとあらゆるゴミが捨てられています。

現状
継続して現状をリサーチしており、、一番理解しやすい「車の不法投棄」紹介します。

  • 第一段階
    2
    一定期間に同じ場所に放置されている車に河川管理事務所(国土交通省)が警告書を貼り付ける(中央の窓の白い張り紙)
  • 第2段階
    3
    警告書を見て放置車両と確認した「無関係の不届き者」がタイヤやホイールなどの使えそうなパーツを盗み、車を丸裸にする。(放置から3ヶ月程度が経過している)
  • 最終段階
    4
    タイヤがなくなり、撤去できなくなった車の窓を誰かがふざけて割る→ゴミが投げ込まれる→使えそうなエンジンパーツだけ盗む→火をつけて燃やすなどして手がつけられなくなる。(放置から1年以上が経過している)
  • 悪質なケース
    1
    この場所は鮎釣り漁船の波止場で、堤防道路から緩やかなスロープになっている。車を川に沈めるには最適の場所で、投棄(犯行)後にも逃げやすいだろう。このケースでは入水自殺と勘違いした市民が110番通報したらしく、パトカーだけでなく救急車まで出動し、現場は騒然としていた。

撤去にはクレーンが必要であろうし、運搬と処理にも費用がかかる。犯人を見つけられなければ、この場所を管理する自治体が自腹(=税金)で後始末することになる。
・代表的な不法投棄の例
作業がしやすいように開けた場所に投棄している。ジャッキアップしてブロックを押し込むという作業を4回繰り返し、ホイールごとタイヤを外して持ち去っている。他にもハンドルなどのチューンしてあったと考えられる部品は全て外している。車体番号も削り取られており、所有者の特定が難しい。このケースでは撤去と運搬に4万円程度の費用がかかる。

これら3件は全てとある都府県の県境河川敷で撮影しています。
一級河川の河川敷は国土交通省(旧建設省)の管轄ですが、隣接する自治体が部分的に借り受けていたり、国土交通省から委託されていたりと、複雑に管理されています。警察もよほどの緊急性がない限り、河川敷をパトカーの巡回経路に組み込むようなことはしません。

国土交通省傘下の河川管理事務所の車両が毎日巡回していますが、ルートが決まっており、事後確認をしているだけで、抑止力(予防策)にはなっていません。その中でも不法投棄された車に警告書を貼り付けるなどの事務的な対応には、逆効果との印象を強く受けます。

建設廃材を違法に投棄する建設業者の中には、地元の族議員などと結託している者もおり、河川を直接に管理する自治体を黙らすことこともあります。今も昔も行政改革で最大の足枷になっているのが族議員の問題ですが、これは環境問題にも当てはまります。

・対策
この問題を解決するには、組織的な連携が必要です。
まずは違反者への罰則(罰金の細分化やボランティアでの河川清掃の義務化等)など、不足している法律を整備するのが第一段階。
次に国土交通省と環境庁が音頭をとり、隣接する自治体と連携しながら対策を決め、必要な罰則条例を自治体単位で整備していく必要があります。現在の複雑な河川管理の現状をシステム化し、責任の範囲を明確化していけば自ずと対策(具体的な対応策の骨子)も構築できるでしょう。肝心なのは、族議員の理不尽な陳情に耳を貸さない断固とした姿勢で、少なくとも国土交通省には独立した専従の部署を設置し、自治体の担当者からの情報を漏れなく吸い上げ、活用するシステムを整備する必要もあるでしょう。

抑止力には警察の支援が不可欠ですが、夜間監視能力が必要でしょうし、通常の巡回パトロールでは確認しづらい堤防の内側(もっとも不法投棄の多い場所)をどこからどのように監視し、どのように証拠を確保するのか?現行犯逮捕までするのか?警察との連携は?など、流動的な必要性が要求する能力には限りがありません。
また、裁判所による行政処分までのスピードも重要でしょうし、マスコミを有効に活用できなければ、せっかくの抑止力を世に知らしめることもできません。

実際の「抑止力」としては警備会社などが候補に挙がるでしょう。
しかし、監視カメラを仕掛け、警報装置の作動後に最寄の警備員が現場に駆けつけるホームセキュリティーの延長のような警備システムでは、この手の「やり逃げ型犯罪」には効果がないでしょう。また、工事現場の交通誘導を主たる業務とする大多数の警備会社には建設業者とのしがらみがあるでしょうし特殊な能力を要求するのも酷でしょう。

(2014年2月12日に一部内容を更新)