組織詐欺

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戦後、度あるごとに聞く代表的な組織詐欺としては、「M資金」や「フリーメースン」が有名ですが、90年代初頭以降、体力の弱った銀行や大企業を相手に手口を替えた同類の組織詐欺が横行しています。

当社が知りえたケースの経過は、以下の通り、

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○○産業大学(仮称)の創設計画
国立○○○大学を退職したA元教授(77歳)が一部上場企業で管理職を務める元教え子のB氏(60歳)を訪ね、
「愛知県○○市に産業大学を創設する。自分も創設委員として招かれたため、君の会社の社長を紹介して欲しい」
との申し出があった。B氏が創設計画の骨子について説明を求めると、A元教授は、

・現在は初期の準備段階であるが、竹下内閣で法務大臣秘書官を務めた元高級官僚のY氏(千葉県在住)を発起人に、彼の代理人である大阪八尾市のH(と名乗る者)と㈱整理回収機構・大阪第○支店係長O(と名乗る者)が主体となり設立準備委員会を発足しようとしている
・設立準備委員には、○○電力や○○○自動車、○○重工など産業界を代表する大企業と機械・電気・航空宇宙など各分野の著名な専門家の中から候補者を選出している
・総額6984億円の創設資金については、怪しげなM資金などでなく、世界の王族資金や財閥解体時の凍結資産などを原始とした「管理権譲渡契約資金」なる法務省の管理する合法的な秘密資金から拠出されるため、財政面では一切心配する必要がない
・この秘密資金は昭和26年以降に国内の様々な主要産業に対しての投資実績があるが、存在自体が秘密である
・信用できる大企業(一部上場・資本金300億円以上)の経営者に、資本金の100倍または1兆円単位で提供されるが、アメリカの連邦制度法が適用され、「秘密保持・非公開の原則」を守らなくてはならない
などについて「非公開の管理権譲渡契約資金の概要」と「○○産業大学(仮称)の創設計画」なる書類と関係者の名刺(コピー)を駆使し、熱心に説明した。

B氏は面会の席上で組織詐欺の危険性を指摘し、社長の紹介を断った。

それでも大学創設について強い志を持つA元教授は、今現在も大手○○○石油の常務取締りである実弟や他の元教え子に連絡し、執拗に協力を取り付けようとしている。
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この手口で経験豊富な企業家を騙すことはできない。
この類の詐欺をはたらくグループも、企業家を騙すなど無理なことは先刻承知で、大学教授や高級官僚などの、世知辛い資本主義経済から少しだけ離れたところにいる、「ある程度以上に裕福で、世間ずれしていない者」を巧みな口調でたぶらかし、大学設立後のポストなどで名誉欲を刺激しながら、大企業が参画を見送ったなどと危機感を煽り、信用保証金や活動準備金などの名目で多額の金銭を詐取するつもりなのでしょう。。 A元教授も自覚しないうちに詐欺グループの手先になっていると考えられます。

魅力的な話には、必ず裏があります。
巧みな話術で相手を信用させるのは、詐欺師の最も得意とする手口で、聞き手に付け入る隙を与えないテンポの話術で、魅力的なポイントを強い口調で繰り返し、相手を溶かし、骨抜きにします。年配者を狙うキャッチセールスとも共通するこの類の詐欺行為には、どれだけ魅力的であっても「契約する」などと即答せず、渡されるカタログなどの資料を吟味し、話術以外に信頼できる要素があるかどうか分析すること、信頼できる友人から客観的な意見を聞くなどすれば騙されることはありません。

上記のケースでは、合法的な秘密資金などが存在するのか?なぜ秘密保持を要求してくるのか?なぜ日本国内の事業計画にアメリカの連邦法が関与するのか?などについて考えれば、おのずと答えが出てくるでしょう。
しかし、最近でも稀にM資金詐欺に企業が騙されるケースをニュースなどで見かけます。不景気で体力の弱った企業の経営者が、詐欺と半ば確信しながらも故意に目をつぶり、万が一の起死回生の逆転劇を期待しながら罠にはまるのではないのでしょうか。

(2014年2月12日に一部内容を更新)