組織詐欺

戦後、度あるごとに聞く代表的な組織詐欺としては、「M資金」や「フリーメースン」が有名ですが、90年代初頭以降、体力の弱った銀行や大企業を相手に手口を替えた同類の組織詐欺が横行しています。

当社が知りえたケースの経過は、以下の通り、

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○○産業大学(仮称)の創設計画
国立○○○大学を退職したA元教授(77歳)が一部上場企業で管理職を務める元教え子のB氏(60歳)を訪ね、
「愛知県○○市に産業大学を創設する。自分も創設委員として招かれたため、君の会社の社長を紹介して欲しい」
との申し出があった。B氏が創設計画の骨子について説明を求めると、A元教授は、

・現在は初期の準備段階であるが、竹下内閣で法務大臣秘書官を務めた元高級官僚のY氏(千葉県在住)を発起人に、彼の代理人である大阪八尾市のH(と名乗る者)と㈱整理回収機構・大阪第○支店係長O(と名乗る者)が主体となり設立準備委員会を発足しようとしている
・設立準備委員には、○○電力や○○○自動車、○○重工など産業界を代表する大企業と機械・電気・航空宇宙など各分野の著名な専門家の中から候補者を選出している
・総額6984億円の創設資金については、怪しげなM資金などでなく、世界の王族資金や財閥解体時の凍結資産などを原始とした「管理権譲渡契約資金」なる法務省の管理する合法的な秘密資金から拠出されるため、財政面では一切心配する必要がない
・この秘密資金は昭和26年以降に国内の様々な主要産業に対しての投資実績があるが、存在自体が秘密である
・信用できる大企業(一部上場・資本金300億円以上)の経営者に、資本金の100倍または1兆円単位で提供されるが、アメリカの連邦制度法が適用され、「秘密保持・非公開の原則」を守らなくてはならない
などについて「非公開の管理権譲渡契約資金の概要」と「○○産業大学(仮称)の創設計画」なる書類と関係者の名刺(コピー)を駆使し、熱心に説明した。

B氏は面会の席上で組織詐欺の危険性を指摘し、社長の紹介を断った。

それでも大学創設について強い志を持つA元教授は、今現在も大手○○○石油の常務取締りである実弟や他の元教え子に連絡し、執拗に協力を取り付けようとしている。
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この手口で経験豊富な企業家を騙すことはできない。
この類の詐欺をはたらくグループも、企業家を騙すなど無理なことは先刻承知で、大学教授や高級官僚などの、世知辛い資本主義経済から少しだけ離れたところにいる、「ある程度以上に裕福で、世間ずれしていない者」を巧みな口調でたぶらかし、大学設立後のポストなどで名誉欲を刺激しながら、大企業が参画を見送ったなどと危機感を煽り、信用保証金や活動準備金などの名目で多額の金銭を詐取するつもりなのでしょう。。 A元教授も自覚しないうちに詐欺グループの手先になっていると考えられます。

魅力的な話には、必ず裏があります。
巧みな話術で相手を信用させるのは、詐欺師の最も得意とする手口で、聞き手に付け入る隙を与えないテンポの話術で、魅力的なポイントを強い口調で繰り返し、相手を溶かし、骨抜きにします。年配者を狙うキャッチセールスとも共通するこの類の詐欺行為には、どれだけ魅力的であっても「契約する」などと即答せず、渡されるカタログなどの資料を吟味し、話術以外に信頼できる要素があるかどうか分析すること、信頼できる友人から客観的な意見を聞くなどすれば騙されることはありません。

上記のケースでは、合法的な秘密資金などが存在するのか?なぜ秘密保持を要求してくるのか?なぜ日本国内の事業計画にアメリカの連邦法が関与するのか?などについて考えれば、おのずと答えが出てくるでしょう。
しかし、最近でも稀にM資金詐欺に企業が騙されるケースをニュースなどで見かけます。不景気で体力の弱った企業の経営者が、詐欺と半ば確信しながらも故意に目をつぶり、万が一の起死回生の逆転劇を期待しながら罠にはまるのではないのでしょうか。

(2014年2月12日に一部内容を更新)

架空請求・債権回収詐欺

  • 架空請求詐欺(27.04.2004追加)
    国政債権管理センターと称する者が相談者に送り付けてきた「請求催促通達書」なる葉書。03
    手口はこれまでのものと変わらないがタイミング悪く携帯メールからも似たような架空請求があり、不安になった相談者は事実確認のために電話してしまっている。相手の請求額が3万円台と高額ではなかったため、支払ってしまったとのこと。
    この類のトラブルでは事後相談されても支払ってしまった金銭を取り戻すことはできない。まずはあたふたせず相手のことを知ることが大切であり、業者名や電話番号、お客様コードなどをネット上で検索するだけでも多くのことを知ることができる。
  • 架空請求詐欺
    突然送り付けられてきた「催促通達書」なる葉書
    01
    株式会社と名乗りながら携帯電話の番号しか教えず、金額も明示されていない。
  • 債権回収詐欺
    大阪の明和総業と名乗る者からの「最終御通知」
    02
    借した金銭を取り立てる権利(債権)があるとのこと。

・対策
2000年頃に多発した電子メールからの架空請求詐欺が2003年末頃から手紙や電話に形を変えて再発しています。2014年現在ではオレオレ詐欺が主流で、この類の詐欺は下火ですが、いずれ近い将来に手口を変えて再発するでしょう。
上記の手紙を読んでみると

  • 葉書である
  • 誰に対して、どのような過程で発生した債務(支払う必要のある金額)なのか記載がない
  • 請求金額が明示されていない
  • 法律の解釈が間違っている
  • 加盟していると称する団体が存在しない
  • 脅迫まがいの文言を確認できる
  • 誤字・脱字が多い
  • 連絡先が携帯電話の番号だけである

等々の腑に落ちない点を確認できます。
もちろん正当な債権債務であれば請求された金額を支払う必要がありますが、この場合債権者(取り立てる権利のある者)は債務者(支払う義務のある者)に対し、内容証明郵便などの法律的な意味合いを持つ方法で債権の内容と金額を明示し、協議を開始する旨を通知してきます。葉書や封書で通知してくるなどありえず、さらに身に覚えのない請求であれば返答する必要などありません。

この類の詐欺では、闇で流通する携帯電話と違法に開設した銀行口座、調査会社や探偵と称する者から入手した名簿が使われます。連中は不特定多数に葉書をばら撒き、不安を感じて電話してくる者を脅かし、騙して金銭を詐取します。葉書自体は丁寧な文言で恐怖心をあおり、読み手が電話連絡するよう仕向けるための予備手段に過ぎず、連絡さえしなければ騙されることもありません。相手(自称、債権者)が電話してきたり、取立てにくることもありませんし、会社自体存在しないはずですから、相手にする必要はありません。連絡せず放置しておけばよいでしょう。

注意事項この類の詐欺では、卒業名簿などの廉価な名簿が使われる事もあります。広く浅く不特定多数のターゲットを狙っているため注意が必要です。
本人が就職や結婚を理由に転居した後に、実家に残るご両親が手紙を受け取り、本人に確認を取らずに親心から相手に連絡し、高額の使用料なる虚偽の債務(金銭)を騙し取られるケースもあります。最近では、この親心につけこむ手口は「オレオレ詐欺」など新手の詐欺に移行しています。ご家族との何気ない会話の中で「最近はこんな詐欺が流行しているらしい」などと、情報交換をしておくのも良いでしょう。

類似事例似たようなトラブルに「出会い系サイト」の使用料を請求してくるケースもあります。
この場合、債権者を名乗る者は、メールアドレスや携帯電話の番号は知り得ても、正当な債権者なら知っているはずの住所までは知らないはずです。郵送から利用明細付きの請求書を送るよう要求するか、相手にせず、放置しておけばよいでしょう。
しかし、執拗な業者は様々な手口から住所を知ろうとします。代表的なのが宅配業者を偽る手口で、「電話番号は読めるが宛先が読めない。正確な住所を教えて欲しい」などと電話してきます。誰から送られたどんな物なのかを確認し、身に覚えがなければ、住所を教えないよう心掛けると良いでしょう。

(2014年2月12日に一部内容を更新)

2014/02/24 | カテゴリー : 詐欺 | 投稿者 : taken

国際寸借詐欺

香港ロトくじの購入を勧誘する海外からのダイレクトメール
lps

あまたある懸賞の応募者名簿を手に入れ、送りつけてきたと推測できます。
いかに高額に当選したかを宣伝する資料と、クレジットカード番号や生年月日、電話番号などを要求する申込書、切手不要の返信用封筒が送られてきます。

上記資料を提供していただいた方は、以前にもオーストラリアロトくじについて、まったく同じ内容のダイレクトメールを受け取ったことがあるとのこと。

ポイントは、外れても文句を言う気になれない一口2000円という低額の参加料にある。騙されたことに気づいて被害を届け出ても警察が事件として取り扱う可能性は低い。たとえ事件になっても参加料が戻ってくることはなく、被害自体を届け出ないだろうという被害者側の心理を巧みに利用した国際版の寸借詐欺です。

このケースでは、国内にも名簿を収集などの手引きするグループがいるはずで詐欺グループの全容を掴みきれない。ダイレクトメールを大量に送りつけ、例え誰も引っかからなくても食べていくのに困らない程度の資金力があるとも考えられます。

いずれにせよ、この類のダイレクトメールには一切相手にしないことが基本的な対応策です。
下手に手出しすると、その他の犯罪を呼び込む結果になりかねません。債権回収・不当請求詐欺と同様に徹底的に無視すればよいでしょう。

この類の詐欺行為を知るたびに、郵便局など配達前の段階で対処できないものかと考えてしまいます。
郵送されてこなければ気にする必要はありません。 不当請求詐欺などは社会問題でもあり、受付の段階でハガキの内容を確認できるであろうことから、明らかに問題がありそうな案件については送り主に身分証明を義務付ける、仕分け段階で配送を中止できるというような法整備はできないものでしょうか。

(2014年2月12日に一部内容を更新)

2014/02/24 | カテゴリー : 詐欺 | 投稿者 : taken

右翼と左翼

右翼という俗称は、フランス革命後の国民公会(1792~95)の席次に由来すると言われています。

議長席から見て右側に保守的なジロンド党、左側に急進的な革命派のジャコバン党が座っていたようです。
これから転じて、

  • 国家主義的、民族主義的な立場をとる勢力を「右翼」
  • 社会主義的、共産主義的な勢力を「左翼」

と呼ぶようになったといわれています。

国内では「尊皇攘夷」「皇室崇拝」などを掲げる勢力を右翼、「自衛隊反対」「安保反対」が左翼と判断すればよいでしょう。どちらにも一部に過激な勢力があり、極端な主義主張から要人を狙うテロなど、暴力主義的な活動を展開しています。

これらの政治的思想を持つ勢力は、公安警察(警備局)に活動を監視されています。
彼らの街宣活動には、必ず所轄警察署の警備課と都道府県警察本部の警備課職員がチームを組んで同行し、違法行為がないか監視しています。規模が大きければ地域課の制服警官も動員されますが、正当な団体による正当な活動については、憲法の社会権や自由権が絡んでくる問題でもあり、取り扱いに注意が必要です。

このページでは、企業対象暴力の観点から右翼と極左過激派について検証します。

右翼
全国を統一する組織を持たず、主義主張を同じくする者が独自に団体を作り、活動しています。実態把握が困難で、全国で約1000団体9万人が活動し、このうち活動が活発なのが約800団体1万6千人と見られています。この活発に活動する団体のうち、暴力団と深いつながりを持つか暴力団を名乗るなどの「暴力団系右翼団体」が300団体3600人ほど存在します。「純粋な国士」を名乗る個人から営利を目的に企業を狙うだけの団体まで、規模や形態が各々異なるため、個別に対応する必要があります。

悪質な右翼は、団体名を恫喝的に利用し、企業の弱みや問題点を街宣車によるデモから糾弾し、賛助金や雑誌の購読を要求します。また暴力団も暴力団対策法の施行を契機に、企業からの資金調達に重点を置くようになっており、右翼を名乗る、即席で政治結社を作るなどの手口から、不当・不法に「しのぎ」を獲得しています。同様に総会屋の中にも政治結社を名乗る者がいるなど、右翼と暴力団、総会屋が相互に連携を強め、それぞれの得意分野で影響力を行使する傾向が強くなってきています。

極左過激派
90年代末期以降、ヨーロッパ各国で中道左派政権がトレンドです。
(2001年9月の事件以降、一部の国では極右政権が「対テロ」などというもっともらしく聞こえる大義名分で世界中を巻き込んで局地戦争をしてきましたが、結局リベラル政党が政権を握り、2014年現在でもその後始末が終了していません。)
中道左派とは「資本主義社会における資本主義を前提とした共産・社会主義」です。国内でも共産党がこの中道傾向を強めており、以前のようなレーニン主義的主張を前面に押し出した活動は、鳴りを潜めています。

この中道的な思想転換は、一部の狂信的な思想家には到底受け入れられるはずもなく、「生ぬるい」との主張を持つ者同士で急進的な極左過激派(以下、極左)と言われる団体を立ち上げています。代表的なのが革丸派と中核派、革労協の3団体ですが、第二次安保闘争や成田空港関連のトラブルで警官隊に火炎瓶を投げていた連中が母体になっているようです。当時は学生運動などと呼ばれていましたがいわゆる団塊世代でもあり...自分達の活動を学生運動などとは呼びにくいため、他の分野に活動の場を見出しています。

最近の彼らは、狂信的な匂いを消し、下部組織として「○○ユニオン」なる一般の労働組合(誰からの相談にも応じる社内労組を無視した労働組合)を立ち上げています。
暴力団のフロント企業にも似たこれらの労組は、テレビや新聞などを巧みに利用しながら、「リストラ110番」や「職場いじめ110番」などのイベントを開催し、相談者からの情報を元に、狙いをつけた企業に乗り込み、デモやピケなどの街宣活動(威力)で体力を奪い、解決金や和解金の名目で金銭を獲得します。労働基準法や労働組合法に関連したトラブルは、社会的信用問題にもつながりやすいため、狙われた企業は和解金要求に応じ、安直に問題解決を図る傾向が強いようです。
支払われた和解金のほとんどは極左の活動資金になります。相談者本人にはほとんど配当がなく、ゆすり・たかりの手口から金銭の流れまで、暴力団や右翼と大差ありません。

極左関連のトラブルでは、相手の規模などの見誤りがちです。彼らはネットワークを持っており、共闘や支援などを名目に、短期間に大勢を動員できる組織力を持っている事に注意が必要です。

・対応策
右翼や極左のトラブルへの対応策は、不当・不法な要求には断固応じないこと、組織で対応することなどが要件であり、基本的な企業防衛と方法は同じです。
しかし政治的思想を持つ団体を相手にする場合は、憲法の社会権や自由権にかかわるトラブルに発展することもあり、ほとんどのケースでマスコミが飛びつきやすいことにも注意が必要です。
そのため、常に正当性を主張できるように、証拠収集と外部支援、マスコミ対策などに重点を置いた危機管理体制を整備する必要があるでしょう。

(2014年2月12日に一部内容を更新)

外国人就労

製造業などに多くの外国人が従事していますが、不法滞在・不法就労の温床にもなっています。

外国人の雇用形態には、大別して「派遣」と「実習(研修)」の2種類があります。日系ブラジル人等が派遣、中国人等が研修というのが一般的ですが、その違いを雇用主側が正しく理解しているとはいえません。

派遣で日系外国人は派遣会社と雇用関係にあり、給与の支払いや福利厚生、病欠時の欠員補充などについて、派遣会社が責任を負います。人件費を抑制でき、問題発生時にも責任を負う必要がないというのが、派遣先企業にとっての最大のメリットでしょう。万が一に逃亡し不法就労したとしても派遣会社の責任であり、派遣先企業が責任を追及されることはありません。

対して実習制度を利用して就労する外国人実習生は、自国の送り出し組織と契約しており、国内の受け入れ団体が身柄を管理、地元のコミュニティ(生活共同体という意味のマフィア、華僑)が日常生活を支援し、実習先企業が直接に給与を支払うという複雑なシステムの中で働くことになります。
これは、中間マージンを搾取する悪徳団体を排除するために整備された法律を元にしたシステムですが、問題発生時の責任の所在について問題があります。
例えば、逃亡時の責任は、受け入れ団体が責任を問われますが、実習先企業もマスコミ報道などで社会的な信用面で影響を受け、少なからず被害を受けます。
実習先企業での実習(就労)を名目に発給される入国ビザにも問題があり、途中解雇されても、実習生本人が他の実習先を見つけるか見つける努力をしていれば、ビザの期間中は国内に滞在できます。途中解雇されるということは、勤務態度や生活態度に問題があったからで、このような実習生が他の実習先と契約できるわけもなく、生活費を捻出するためにアルバイト感覚で不法就労に身を染めるわけです。

不法就労=強制送還となりますが、実習先企業が社会的な責任を追求されることもあり、お客様である実習先企業に迷惑をかけたくない受け入れ団体は解雇時に実習生を強制的に送り返したいわけですが、解雇後に直ちに不法滞在とはならず人権侵害などの法律上の問題もあり、帰国を強制することはできません。
そこで当日の就労後に車に乗せ、車内で解雇を申し渡し、突然の解雇に呆然とした状態のまま空港に連れて行き、飛行機に乗せる方法から半ば強制的に出国させることになります。
この時点で問題になるのが給与清算で、送り出し組織と途中解雇時の残存給与を帰国後に清算すると約束しているにも関わらず、中間マージンを搾取されたくない実習生と、給与には関与していない受け入れ団体の間で、給与を受け取らなければ出国しないなどと、空港に向かう車内で押し問答が始まり、実習中に手に入れた財物(携帯電話や電化製品、家具類)の処理方法も含めて徐々に大きな騒動になっていきます。
このままの状態で空港に到着しても、まず実習生が車から降りようとしない、降りても「拉致監禁、誘拐だ」などと騒ぎだす(警察の関与)、例えチェックインできても、空港内のトイレに閉じこもる、出国審査で出国するつもりがないなどと騒ぐ(=入管による出国拒否)、飛行機に乗ろうとしない(不乗)、飛行機の中で騒ぐ(=パイロットによる退去命令)などのトラブルになりやすく、事態はどんどん悪化していきます。

当社がこれまでに移送した実習生の解雇理由の多くは、職場で他の実習生と組合もどきの似非組織を作り、給与を不当にアップさせるよう扇動し、団体交渉を申し入れるなどの勤務態度と、門限を守らないなどの生活態度に関するものがほとんどで、特に中国人実習生によるトラブルが多く、移送中の車内と移送先の空港で騒ぎを起こし、暴れるのも彼らだけです。デタラメで自分勝手な言い分を聞いていると、人格(性格)上の問題以外にも、元々の国民気質や思想教育(特に敵性思想教育では、「自分たちは悪くない」=「他人が悪い」などという根拠がなく、無責任な責任転換に繋がりやすい)の気配を感じます。

これらのトラブルを防ぐには、契約、入国、実習、帰国の各段階での対応手順を確立しておく必要があるでしょう。

まずは、送り出し組織と受け入れ団体の双方が、実習生として派遣するのに充分な適正があるかをチェックする必要があります。契約前の段階で、履歴書の提出や面接だけでなく、リポート提出を義務付け、実習生の教育水準や人格なども把握しておくことが大切です。

解雇時の帰国方法、給与清算と財物の処理について統一した対応手順を確立し、契約時だけでなく、実習中にも定期的に途中解雇の可能性などについて刷り込みを行い、解雇時に文句を言わせない環境を確立しておくことも重要です。

解雇を申し渡すのにも相手の人権を無視するような態度や言動があってはいけません。飛行機の出発時刻を理由に短時間で説得しようとしてもトラブルになります。ある程度の時間をかけて丁寧に解雇理由を理解(納得)させる必要があります。

また、解雇の申し渡し、車輌による移送、移送先の空港内での手続き、飛行機への搭乗の各段階で実習生の監視を徹底する必要があります。通常は、受け入れ団体の担当者が解雇申し渡しから飛行機への搭乗までをカバーしますが、少人数で無理をすることは、逃亡(不法就労)を助長するだけですので注意が必要です。解雇する者の人格や人数、空港までの距離、飛行機の発時刻、前泊の必要性などに応じて必要な人数を補充したり、当社の移送警備をご利用いただくなど、専門家の活用も含めて組織立って対応される効果的です。

(2014年2月12日に一部内容を更新)

警備業法

警備業は認定事業です。

探偵社などが身辺警護をうたい文句に広告宣伝しているケースを良く見かけますが、警備業の営業認定を受けていなければ警護すること自体が違法行為です。準警察的な意味合いが強く、社会的責任の要求される業種であり、誰でも気軽に営める職業ではありません。

国内の警備会社は全て「警備業法」という法律の規定に基づいて、警察から営業認定を受け、厳しく管理されながら営業しています。

営業認定には「警備員指導教育責任者」資格が必要で、下記の警備区分ごとに警察主導で実施される講習で試験をパスした者に与えられます。受講には3年以上(実質は5年程度)の実務経験が必要です。

この資格を根拠に公安委員会に営業認定を申請しますが、犯罪歴はないか?暴力団など組織犯罪に関与していないか?などについて警察から厳しいチェックを受けます。この段階で前科を持つ者(5年以内)や組織犯罪者が排除されます。

認定を受け、営業を開始しても、警備員への半年毎の教育義務、適正な業務運営などについての事細かな規定を遵守する必要があります。半年毎に所轄警察署から立ち入りを受け、不備があれば認定を取り消されることもあります。
警備業法では、警備業務を

  • 1号警備 (施設警備)
  • 2号警備 (工事現場などの交通誘導・雑踏警備)
  • 3号警備 (現金輸送)
  • 4号警備 (身辺警護)
  • 機械警備 (ホームセキュリティ)

に分類分けしています。
依頼を受け、上記の警備業務を提供すれば警備業を営んでいると判断されます。営利を目的に警備し、領収書を発行すれば警備業であると言えば分かり易いでしょう。
機械警備については、「警備員指導教育責任者」とは別の資格が必要となり、適した場所への待機所の設置や25分以内のレスポンスタイムなど、さらに厳しい制約を受けます。他にもスーパーなどでの万引きを防止する保安警備などがあります。

各々の業務ごとに個別の教育義務があります。
新人採用時には、法律などの基本教育を15時間、業務別の教育を15時間と最低30時間の新任教育を実施し、経験豊富な警備員にも半年毎に最低8時間の教育義務が課せられます。過去の職歴や保有資格に合わせて時間数が減免されることはありますが、警備員が何の教育も受けずに現場に出ることはありません。また、2号警備に従事する警備員を1号警備に配置換えする場合は、新任の業務別教育(15時間)を受けさせる必要があります。

半年毎に所轄警察から立ち入り検査を受けます。
「教育に不備はないか?」「適正に業務運営をしているのか」「護身用具の管理は?」など、事細かにチェックされ、書類の管理に少しでも不備があればペナルティで、教育時間を多く見せかけるなどするとアウトです。あまりに悪質だと認定を取り消されることもあります。
これまでに教育時間などで問題を指摘されたことはありませんが、2号警備を主体とする警備会社の中には、3月の繁忙期に教育を省く業者もいると聞きます。ただでさえ工事だらけで危ない3月に、何の教育も受けていない警備員の誘導で車を走らせているのかと思うとゾッとします。

このように警備業法は、警備業務を適正に運営するための公安委員会(警察)との約束事です。
多くの規定(制約)をコストと見るか、社会的責任を果たす上で当然の義務と受け取るかは意見の分かれるところですが、抜かりなく適正に運営し、不備さえなければ、身分が公的に証明されます。身辺警護のような社会的信用が重要な意味を持つ業務を営む者としては、ありがたい限りです。

(2014年2月12日に一部内容を更新)

2014/02/24 | カテゴリー : 法律, 警備 | 投稿者 : taken

錯覚商法 -紳士録商売・詐欺-

ダイレクトメールなどからアンケートへの回答を依頼したり、あたかも抽選に当たったかのように偽り、言葉巧みな文章から読んだ相手を錯覚させ、契約を強要する(法外な料金をせしめる)悪徳商売を一般的に「錯覚商法」と呼びます。

この類のトラブルでもっとも軽微なケースとして、数年前に流行した家電量販店のダイレクトメールがあります。
「あなただけに携帯電話が当選しました。今なら無料でプレゼントします。」などと書いてあれば、誰でも喜んで店まで行きます。しかし、欲に目がくらみ、わざわざ店まで来る者など店員にしてみればカモ同然です。契約料や基本使用料、通話料などが別途必要と知った頃には、店員の巧みな話術に翻弄され、「拒否するチャンスすら与えられずに契約してしまう」というトラブルが多かったようです。

ここでは悪徳なケースとして「紳士録商売」を紹介します。
会社を定年退職したばかりで金銭的に多少のゆとりがある年配者などを標的にした詐欺商法で、まず○○出版社を名乗る者からの電話で始まります。ある日前触れもなく「当社発行の紳士録について確認書を郵送したが返事はまだか?早く返送するように。」といった内容の電話があり、数日後にはダイレクトメールが郵送されてきます。魅惑的なパンフレットと名前を記載した紳士録のコピー、「会員登録確認書」と送料受取人払いの封筒が同封されています。

確認書は、

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確 認 書
No、12369
私は貴社発刊人事名鑑について平成14年度版の購読及び、会員登録を了承します。以後発刊分については私の確認しないものは一切お断りいたします。但し他社との契約等はこの限りではありません。内容書面を了承し返却いたします。
平成  年  月  日
住所
氏名                    印
○○人事出版社
○○人事探偵社 御中
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という内容で、右横に「継続掲載しない場合今回限りにいたします。署名捺印の上ご返送ください。」と鉛筆で殴り書きされており、署名捺印と返送を催促しています。

「購読する気も、会員になる気もないから」と確認書を返送するとアウトです。
まずは、数字のトリックがあります。上記の確認書は平成14年2月中旬頃に届いたものです。平成14年版の紳士録はすでに印刷してあり、発送の準備も整っているはずです。「今回限り・・・」の文言もあたかも会員登録も購読も強要しないといった印象を受けますが、これも読み手を安心させるためのトリックです。確認書の返送は、「今回は購読も会員登録もする」と意思表示してしまうのと同じです。間違いなく紳士録なるものが送りつけられ、20万円以上の法外な料金を請求されるでしょう。

確認書に「購読も会員登録もしない」などと手書きで書き込んでも署名捺印してしまえば何ともなりません。相手はプロです。必要であれば「新しい確認書」を偽造するでしょうし、まずは電話から、次に自宅訪問という形で組織的に入金を強要(脅迫)してくるはずです。

・対策
この類のトラブルは放置し、無視することが一番の対策です。他の詐欺行為と同様に詐欺グループは面倒な努力などしません。だませる可能性が低ければ他の対ゲットにシフトしていくだけです。

万が一に確認書を返送し、新白くなるものが送りつけられてきた場合も売買契約が成立していませんので送り返す必要はありません。クーリングオフなど気にする必要もなく、相手が取りに来た際に渡せるように未開封のまま保管しておくだけで充分です。

振込期限を過ぎ、振込要求の電話があった場合には、相手が法人であるのか?住所と電話番号は?など、相手の情報を細かく確認し、担当者のフルネームを問い質してください。ほとんどのケースで相手は、「どこの誰でもないこと」を望むはずで、名前を名乗らない連中を相手にする必要はありません。

あまりにしつこいようなら、「送られてきた紳士録なる荷物は返却できるように保管している。取りに来い。」「執拗で理不尽な支払い要求については大変に迷惑しており、法的措置の準備をしている。」などと申し渡せば二度と電話もかかってこなくなるでしょう。

毅然とした態度で拒否することが基本です。

(2014年2月12日に一部内容を更新)

書籍販売 -押し売り-

勝手に期限付き振込用紙を同封して商品を送りつけられるケースがあります。

もちろん詐欺ですし、売買契約の成立していない商品に料金を払う必要などありませんが、振込期限を過ぎると電話から入金を要求したり、街宣活動をほのめかすなどの脅迫すれすれの手段で入金を強要しようとします。

ほとんどの企業が人権問題や同和問題に神経質であることを知るグループは、一冊5万円もする関連書籍を送りつけ、知識不足を指摘し、屁理屈をこねまわし、振込みを強要します。この同和問題を騙る書籍販売は、以前ほど話題になりませんが、企業から退職した企業幹部にターゲットを変更する、同和問題をナショナリズムに切り替え、日本海の領土問題をテーマにした書籍を販売する等、手口が細分化されただけで現在でも被害がなくなることはありません。

一度でも金を払ってしまうと、今度は別のもっともらしい名前の組織を名乗る者が月刊誌や団体新聞などの購読を強要してくるはずです。全て同じグループによる組織的な強請りと判断してよいでしょう。

この類のトラブルでは、売買(契約)が成立していないことを理由に、断固とした態度で支払いを拒否するのが正しい対処方法です。

・対策
契約が成立していないにもかかわらず、売り手側の都合のみで送りつけてくるわけですから、商品を送り返す必要もありません。クーリングオフ制度など気にする必要もなく、相手が取りに来た際に渡せるように保管しておくだけで充分です。

振込期限を過ぎ、振込要求の電話があった場合には、相手が法人であるのか?住所と電話番号は?などの相手の情報を細かく確認し、担当者のフルネームを問い質してください。ほとんどのケースで相手は、「どこの誰でもないこと」を望むはずです。そもそも名前を名乗らない連中を相手にする必要などありません。

  • 同和問題等には積極的に取り組んでおり、書籍を購入する意思のないこと
  • 送りつけられた書籍は保管してあり、取りにくればいつでも渡せること

などを申し渡せば二度と連絡してこないでしょう。

また、この類の連中は、窓口担当者の「言いまわし」や「言葉尻」に食いついてきます。言葉遣いと態度にはくれぐれも気をつけてください。
街宣活動や本社訪問などの直接行動をほのめかすようなら、「前者で協議して対応を決める」と回答するのが効果的です。
ほとんどのケースで、正しく対応すればこの段階で連絡してこなくなり、解決します。相手も法律すれすれであることは自覚しており、会社に来ることはないでしょうし、街宣活動などするわけがありません。営利を目的としているわけですから面倒な努力などせず、次のターゲットにシフトしていくでしょう。

しかし企業側の対応能力不足や「事なかれ主義」が被害を拡大させているのも事実です。断固拒否の姿勢を担当者一人に求めるのは酷で、一人で抱え込ませるのは逆効果です。上司に相談し、会社として対応するのが得策でしょう。

また、相手に組織力があり、トラブルが大きくなる可能性にも注意が必要で、被害者としての正当性を主張する必要があるかもしれません。このため、経過を記録し、証拠(書籍)を保管、相手との会話を録音するなど、いつでも法的措置が執れるように初期段階から準備しておくのが基本です。

「事なかれ主義」は組織犯罪を助長させるだけです。断固とした姿勢で問題解決に取り組んでください。

(2014年2月12日に一部内容を更新)

民事再生と安全管理

倒産・破産と勘違いされがちですが、民事再生申し立てとは民事再生法を根拠に、裁判所の管理下で支援を受けて会社を存続させようとする手続きです。裁判所に選任される監督委員(弁護士)が申し立て人(債務者)の残存資産の運用を管理し、社員の身分と給与の支払いを保護し、下請等の債権者には、債務者の資産額をベースに債権額に応じて金銭が分配されます。(=全額が支払われることはない)

これまでに関与した民事再生事案では、資金繰りの困窮を理由に、不渡りを出す直前に申し立てるケースがほとんどですが、申し立てに至る経緯を考察すると、新規開発の遅滞、サービスの低下、販売努力の不足などの自滅的な「自己責任」と銀行による不当な貸し渋り、組織的な乗っ取り工作、根拠のない風評被害などの「他者責任」があります。

潰れるほどではなく、回復の見込みがあるにもかかわらず、拡大解釈した銀行が潰してしまえと貸し渋る「複合責任」のケースも多く見られます。

一般的には、

  1. 申し立て
    通常は弁護士が申し立てます
  2. 保全処分
    売掛金等の支払いが停止され、資金不足による手形不渡りは回避されます。
  3. 監督命令
    裁判所が弁護士の中から選任の監督委員を選出します。
  4. 債権者説明会
    下請はもちろん、植木リースや雑誌購読、新聞など、微細な取引業者などを含む債権者に対しての説明会が開催されます。
  5. お客様説明会
    住宅販売などで代金(ローンを含む)を支払ったが物件の納入が済んでいなかったり、銀行や証券会社で資金を運用しているなど、取引が完了していない場合は、お客様も債権者となります。
    ※ 通常は取引業者とは別に説明会が開催されます。 ※
  6. 手続開始決定
    再生の手続きが開始されます。
  7. 再生計画原案等の提出
    概算の弁済率が決まり、メインバンク等の大口債権者から同意を取り付けるための交渉が始まります。
  8. 債権者による債権届出
    届け出ない債権は無効になります。
  9. 債権調査
    届け出られた債権が調査されます。
  10. 再生計画案の提出、債権者への送付
    裁判所に再生計画を提出し、裁判所が債権者にその内容を通知します。
  11. 債権者集会での決議
    参加者の過半数と出席しない債権者の過半数の賛成を受け、再生計画の履行が決議されます。
  12. 裁判所による認可
    債権者集会の決議を元に、裁判所が履行を認可します。
  13. 再生計画履行

という流れになります。
細かな手続きは省略していますが、準備が整っていれば申し立て日を基準に監督命令までは即日中、債権者説明会までが1~2週間、計画原案の提出までに1ヶ月程度、債権者集会から認可、履行までが4~6ヶ月程度とかなりの期間を要します。

もちろん、届け出る債権者の数が多ければ債権調査の期間が長くなりますし、支援の申し出がない場合や複数ある場合には、支援者の選定が遅れる可能性もあります。

これまでに関与したほとんどの民事再生事案で、再生企業としての長期的なリスクは申し立て以前に評価されており、このシミュレートを基準に手続きが進むため、企業危機管理上の観点から指摘する事はありませんが、注意するべき点としては、往々にして自虐的になりがちな態度を改め、「債権者の皆様と一緒に困難な状況を克服し、再生を成し遂げる。」という基本的なコンセンサスを幹部社員だけでなく一般社員にも周知徹底し、会社全体で共有することでしょう。

また警備会社としての観点からは、手続き中に高い確率で発生する債権者によるプレッシャーなどの短期的で突発的な脅威についても注意を払う必要があります。
申し立てがなされた時点で債務者は、監督委員の許可なく資産を運用できなくなりますが、下請などの債権者にしてみれば、親会社から債権を回収できないことは死活問題であり、「無いものは払えない」という理論は通用しません。多くのケースで申し立て前から取引残高の確認が始まり、申し立て直後から、民事再生中と再生後の展開も見据えた債権回収工作が繰り広げられます。債権額の大小にもよりますし、中には紳士的な債権者もいますが、ほとんどは恫喝と恐喝、集団による威力業務妨害まがいの不当要求、裏取引や裏工作の根回しなど、他の債権者より少しでも多く回収するための工作合戦は熾烈を極めます。

回収工作の程度と期間は、各々の債権者が持つ債権額の大小が基準になりますが、友好的であったはずの債権者が豹変する、敵対的な債権者が突然に友好的な姿勢を見せるなど、事前予測が通用しないケースが多く流動的です。

このため、申し立てから再生計画履行までの期間を状況に応じて分割し、安全管理を実施するとよいでしょう。
申し立て前後から債権者説明会(お客様説明会)までを「重点的に安全管理を実施する期間」、その後の債権者集会までは、規模を縮小し、不測の事態への即応能力を維持できる程度に「安全管理を強化しておく期間」と大別し、細かく変化する状況に個別に対応すると効果的です。

  • 重点期間
    債権者説明会までの期間は回収工作が集中しますので、直接応対する一般社員の安全管理が必須です。加えて、登記簿に居宅の住所地が記載されている幹部社員については、直接交渉を望む債権者による夜討ち朝駆けや、付け回しなどの行為に注意が必要で、ご本人だけでなく、ご家族の身の安全も確保する必要があります。
    債権者説明会とお客様説明会は、議題の進行とともに会場全体がヒートアップしていく傾向が強いことに注意が必要です。これまでに関与した中には、とある債権者が壇上の幹部社員に詰め寄り、他の債権者もそれにつられて詰め寄るといった展開もありました。対応次第では修羅場となりかねませんし、説明会以前からヒートアップしているであろう債権者の集団心理にも注意が必要です。
  • 強化期間
    多くのケースで債権者説明会以後の債権者は、債権者集会での賛成票をエサに、再生後の特権的な取引関係なども含む回収額についての裏工作を始めます。表面上の工作合戦は落ち着きますが、回収額に満足する債権者はほとんどいないため、再生計画が履行されるまでは、突発的な事態に注意が必要です。

当社では、身辺警護等の実働業務だけでなく、これまでの経験を軸とした安全管理計画の立案や実践ノウハウの提供、債権者の動向予測などで皆様をサポートする準備があります。まずは「無料相談」からご相談いただき、必要に応じてご利用ください。

(2014年2月7日に一部内容を更新)

人格障害と精神障害、措置入院

これまでの経験を軸に考察すると、介入したストーカー事件のほとんどの加害者が「壊れている」か「壊れかけている」かのどちらかです。

元恋人が加害者の事件では、ほとんどの加害者が自己中心的で短気な性格で、仕事などで何かしら精神的に追い詰められた状態にあります。
「一方的な片思い」や「ふられた腹いせ」を理由とした事件でも多くの加害者の性格が捻じ曲がっていますが、まれに精神的に壊れているケースもあり、注意が必要です。
どこの誰が嫌がらせしているのか検討もつかないようなトラブルでは、3分の1程度の加害者が壊れています。

どのように壊れているかが問題で、2種類に大別できます。医師ではないため断定はしませんが、

性格が極端に歪んでいるのを「人格障害」
心の病を「精神障害」

と分類分けし、対応しています。
障害者による凶悪犯罪についての裁判では一般的に、人格障害は性格上の問題と判断され、問答無用で罪を問われます。対して精神障害は、その程度により常識的な判断ができたかどうか(責任能力)が焦点となり、重度の精神障害と判断されれば罪を問われないこともあります。

ストーカートラブルでは、ほとんどの加害者が人格障害またはその予備軍(壊れかけ)のどちらかで、まれに精神障害者もいます。各々のケースに個別の対応策があり、代理人面会や再発予防の方法が違ってきます。

相手の状態を把握できれば、対応策を決めやすくなります。ここでは、簡単な判別方法と対応策をアドバイスします。

・人格障害
人格=性格です。幼年期の家庭環境や思春期の人間関係など、成長に従って形作られるもので、病気ではありません。

  • 片思いの相手にふられた時に、過剰な反応を見せる「関係過敏型」
  • 無関係の人間が自分に惚れていると信じ込み、妄想を抱き続ける「関係妄想型」

などさまざまな種類がありますが、共通する特徴は自己中心的で、感情の起伏が激しく、些細な事に敵意をむき出すことです。
「障害」とは呼べない程度に精神的に壊れかけていることもありますが、基本的に性格が歪に捻じ曲がっているだけですから、一般的な社会生活を営めます。社会的に外面がよく、家族や恋人などの身内に暴力をふるうというようなケースが代表的な人格障害の例でしょう。

見分け方は簡単です。交際中から兆候があったはずで、「何気ない一言に激怒する」、「思い通りにならないとすぐ怒る」、「喧嘩をすると怒鳴ったり、手を出したりする」などが典型的な症状です。
交際解消後は自分の行為を正当化(言い訳)し、責任転換しながら嫌がらせをします。「警察なんか怖くない」、「新しい恋人ができないのはお前のせいだ」、「貢いだ金を返せ」などと、根拠のない荒唐無稽な主張を繰り返しているはずです。

  • 過去の事例
    代表的な例として大阪の連続児童殺傷事件があります。
    この事件で加害者は、罪に問われないように「措置入院制度(後述)」を悪用して精神障害者を装っています。このように損得勘定ができ、用意周到に小細工ができるのは精神障害ではなく、人格障害です。この事件は裁判が継続中であり、断言できませんが、たぶん実刑を食らい、一生檻の中で罪を償うことになるでしょう。
    ———————————————————-
    本件は2004年9月に死刑が執行されました。
    漏れ聞く情報からは、彼も自分が何をしでかしたのか理解ができているようだが、なぜ謝罪しなくてはならないのかを最後まで理解することができなかったのだそうです。 誰もが持つ社会的常識を理解できなかったり、かたくなに拒否するのも人格障害の代表的な症状です。幼少期からの人格形成の過程で、よほどの問題があったのでしょう。

・対応策
重度の人格障害でなければ、常識的な判断ができるため、通常のストーカー対策で解決します。
証拠を集め、法的措置の準備を整えた上で加害者と面会し、嫌がらせを辞めなければ法的措置を執る旨を申し渡し、自発的に謝罪し、今後何もしないと誓約するよう誘導していけば99%は解決します。ギャラリーから確認してください。
注意点は、当事者同士の面会がタブーであることです。何を言っても効果がないはずで、何気ない一言が相手を逆上させますので「信頼できる友人」または当社などの「専門家」を代理人に面会させると良いでしょう。

この謝罪と誓約で許すという穏便な解決方法でも、まれに開き直り、嫌がらせをエスカレートさせる加害者がいます。重度の人格障害なのか?それとも精神障害も併発しているのか?を判断する必要があり、対応策もケース・バイ・ケースです。
無料相談」からご相談ください。

・精神障害
「心の病」による幻想から、自分の困難を他人の責任だと信じ込むタイプが精神障害であり、病気です。医師による治療を受けない限り、回復しません。

「喋る内容や手紙の文章に整合性がない」、「理由なくわめき散らす」、「嫌がらせに計画性が感じられない」などが典型的な特徴で、人格障害と同様に「衝動型」など様々な種類があります。問題なのが計画性のなさで、「嫌がらせ電話やメール」→「付回しや待ち伏せ」→「暴行・障害や住居侵入」という一般的なエスカレートの流れが当てはまらず、突発的に何をしてくるのかが予測できません。

常識的な判断のできない加害者と面会しても何の効果も期待できません。また、警察や裁判所を介入させ、法的措置で解決しても「一時しのぎ」にしかならず、実刑で服役しても出所後に再発します。問題解決には医師による治療が不可欠です。

この司法介入でも解決しない「精神障害者による犯罪行為」から被害者を守るために「措置入院(23条申請・24条通知)」という制度があります。

措置入院
加害者が精神障害であり、今すぐ嫌がらせを止めないと自分の身が危ういと確信できる場合には、措置入院を申請をするの一つの方法です。(23条申請)

措置入院とは精神障害者による犯罪を予防するための制度で、自分自身を傷つけ(自傷)、他人に害を及ぼす(他害)おそれのある者については、精神保険指定医二人以上の診断で、精神障害者であり、緊急性を要すると言う結果が出れば、都道府県知事の命令によって強制的に入院させることができるというシステムです。
逮捕等で警察が関与し、自傷他害いの恐れがあれば警察から行政にその旨が通知されます。(24条通知)

ありがたいのは被害者とその家族はもちろん、加害者の家族などの事情を知る者は誰でも申請できることです。
地域の保健所で申請を受け付け、都道府県が管理・運営します。申請を受けて知事から委任を受けた2名の精神科医が診察し、自傷他害の疑いがあれば加害者を強制的に入院・治療させます。

問題なのが「他害」の定義で、都道府県ごとに異なります。
自傷とは自殺やそれに類する行為と判断して間違いないでしょうが、他害の定義が曖昧です。誰かを傷つけるなり、何かを壊す疑いが強く、緊急性が認められないと他害とは認定されません。毎分数回の頻度で、延々と続く「早切りの嫌がらせ電話」で被害者は明らかに精神的な被害を受けますが、実際に傷つけられるわけではなく、緊急性もないと判断され、他害とは認定されません。
また、申請後の初期段階で精神科医は加害者とも面談します。誰が申請したのかは必ず加害者の知るところとなります。加害者が精神障害と認定されなければ嫌がらせが凶悪にエスカレートする可能性が高いことに注意が必要です。

暴行・障害などの肉体的な被害に苦しんでいる場合は申請できるでしょうが、その可能性となると判断が難しいのも事実です。措置入院が不可能な場合には「医療保護入院」という制度もありますが、これには加害者の家族の同意と協力が必要で、治療というよりは療養です。

この措置入院については継続して自治体から裁判所に管理を移す方向で法改正する審議がされていますが、憲法で定める基本的人権にかかわる問題であり、万が一に間違った判断があれば人権侵害(=憲法違反)になりますのでどの省庁も腰が重いのが現状です。
この厳格すぎる措置入院とゆるすぎる医療保護入院の間に半強制的な措置制度ができることを切に願います。

(2014年2月7日に一部内容を更新)